経常利益を20%上方修正したモロゾフ(2217)はチョコレートにもっと注力するべき
要点:洋菓子の老舗モロゾフが8月29日の大引け後に上方修正を発表しました。17年1月期第2四半期累計の経常利益を従来予想の8.5億円から10.2億円に20%増額。増益率が51.5%から81.8%に急拡大します。併せて通期の経常利益も従来予想の15.3億円から17億円に11.1%上方修正。増益率が14.4%から27.2%に拡大する見通しとなりました。売上高の若干の上昇と、ナッツ原価の下落、人件費が予想を下回ったことが背景にあるようです。中期経営計画によると「チャレンジ」(どこかで聞いたような……)期間中のモロゾフ。時勢的にはチョコレートにもっと力を入れると良いのでは、という話です。
■株価は29日の終値426円から一時439年まで上昇
【平成29年1月期第2四半期】
▼売上高 138億5000万円(予想)→139億円(修正値)
▼営業利益 7億9000万円→9億6000万円
▼経常利益 8億5000万円→10億2000万円
【平成29年1月期通期】
▼売上高 288億5000万円→288億5000万円
▼営業利益 14億7000万円→16億4000万円
▼経常利益 15億3000万円→17億円
売上高の上昇率はわずか。通期は増額していません。原価率改善による、利益の上昇ですね。ナッツ類の価格が下落傾向にあるとのこと。
残念ながら原材料の価格推移に関する資料は見つからなかったものの、原油価格が1バレル50ドルを割って、45ドル近辺で推移していることを考えると、輸送コストも格段に下がっていることは容易に予想できます。
モロゾフは洋菓子部門と喫茶部門に分かれていて、売上の構成比率では喫茶部門が6%。洋菓子部門が会社の業績を支えている構図です。
28年1月期の決算によると、プリンや半生菓子の「ブロードランド」が好調な売れ行きをみせています。個人的にはチョコレートに力を入れると良いのでは、と思っています。
▼根拠 ※全国半生菓子協会調べ
赤:チョコレート→生産数量、小売金額ともに年々増加
黄色:洋生菓子→生産数量、小売金額ともに年々減少傾向
チョコレートのマーケットは拡大傾向にあります。
少子高齢化の日本において、マーケットが拡大していることは驚異的です(葬儀、介護、高齢者住宅業界を除いて)。このチャンスを何とかモノにしたいものです。とはいえ、「マーケットの拡大=競争激化」なので、競合に勝つことが極めて難しいことも事実。
■チャレンジ期間でシェア拡大とブランド確立に動いてほしいモロゾフ
菓子業界のモロゾフ売上高順位は11位。同業の不二家937億円(6位)に大きく水をあけられている状態です。
裏を返せば、巻き返しのチャンスがいくらでもあるということですね。伸びしろがあるんですよ。ところが、モロゾフの長期経営計画は具体性に欠けた残念なもの。
STEP1:CHANGE 期間2012年1月~2014年1月
STEP2:CHALLENGE 期間2015年1月~2017年1月
STEP3:CREATE 期間2018年1月~2020年1月
今はチャレンジ期間に当たるわけですが、市場・商品・人材教育において新たな挑戦をする、というところまでで具体的な戦略はみえません。
モロゾフのような老舗企業の弱点は、本質的な部分で抜本的な改革ができないことだと思います。ビジネスモデルが、デパ地下店舗のリニューアル、新商品開発、POPを使った実店舗での集客戦略。この繰り返しです。
この会社のチャレンジ領域はマーケティングです。Cadbury Glowというギフト用チョコレートメーカーは、SNSを巧みに使った戦略で成功しました。2014年の時点で、Twitterのフォロワーは32万を超えているとか。モロゾフはInstagramなどを使ったPR戦略を進めていますが、まだまだ弱いです。その証拠に、業績発表資料にSNSマーケティングの言及が一つもありません。
モロゾフのマーケティング戦略が、WebとSNSに切り替わったとき、本当のブレイクスルーが起こると予想しています。
今回の上方修正は、利益率の改善が柱。これが売上の大幅な上方修正が起こったとき、何が何でも株を買っとけ的な動きになるわけです。マーケットは拡大中。その要素はいくらでもあるはずです。
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