回転ずし「かいおう」が倒産、中途半端な店は生き残りづらい時代に
画像:食べログ
要点:富山県発祥の回転ずしチェーン「かいおう」が8月末に倒産しました。負債総額は6億7000万円。都内では「お台場」などに出店し、一時期はFCを含め全国36店舗を展開。2015年1月期の売上高は19億1900万円(純損失は3000万円)でした。「かいおう」のFC事業は、M&Aや経営支援を行う経営戦略合同事務所(KSGグループ)が譲受。事業再生のパートナーとして、「神戸らんぷ亭」などを運営する株式会社ガーデンを選びました。安くて手軽だけがセールスポイントのこの手の回転寿司店を、本気で建て直すのは相当難しいです。回る「わたあめ」とか「パフェ」に業態変更して、新しいマーケット開拓に動いた方が稼げそうじゃないですか、どうですか、そうですか、やっぱりダメですか。それなら、せめて回らない寿司で本気の勝負はどうですか、という話です。
■「安さ」から「質」への転換期に誕生した「かいおう」
「かいおう」は2007年に富山県で誕生した回転寿司店です。一皿100円、150円(一部180円)の2段階設定でファミリー層の取り込みに成功しました。安さと分かりやすさが”うけた”わけです。
このとき日本は、深刻なデフレ局面からの転換期を迎えていました。マクドナルドのハンバーガーが80円だったのが2006年ごろまで。2007年からは地域価格が導入されて、場所によっては100円になっています。牛丼が350円から380円に値上げしたのもこのころ。
安く、たくさん、という消費者意識は薄れ、ちょっといいものをそれなりの値段でと思う人が増えていました。ちなみに、プチ贅沢の王様「プレミアムモルツ」がエビスビールを抜いて市場を席巻したのが2008年ごろです。安さが注目されていた時代が終わりを告げる、ちょうど潮目に誕生した会社でした(名前が海王とは皮肉なもの)。
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■36店舗出店するも、ダメでした……
この手のお店は、(地銀とかの借り入れが上手くいけば)そこそこいくんです。FC展開にも乗り出し、全国36店舗に拡大しました。関東、東海、近畿、沖縄にまで出店しています。オシャレどころ東京お台場のヴィーナスフォート、ダイバーシティに手を出す冒険者っぷり。海王の名に相応しいですね。
そんなこんなでピーク時には19億1922万円を計上。しかしながら、先細り必至な客数を劇的に伸ばそうと海を渡ったことが運命をわけたのです。身の丈に合わない海外への先行投資で失敗しました。
このとき、FC事業に注力していたら、あるいは生き残っていたかもしれません。不動産、人件費のリスクヘッジができるビジネスモデルは強いですよ、やっぱり。社長はきっと、国内でちまちまFC事業に精を出すのが嫌になったのでしょう。
画像:神戸らんぷ亭
■事業再生のカギは株式会社ガーデンが握りました
「かいおう」がすでに展開しているフランチャイズ事業の支援を目的として、KSGグループが事業譲受しています。この会社はファイナンス支援やM&A仲介などを行っています。そして再生支援の中心的役割を担わせるため、株式会社ガーデンを引っ張ってきました。いわば、ガーデンが救世主なわけです。
ガーデンは「神戸らんぷ亭」を、牛丼屋からラーメン屋へと急激に業態変更したことで有名。牛丼屋は銀座店を残すのみとなっています。
この会社、求人を見ると何やら2018年の上場を狙っている様子。「かいおう」は上場の命運すら握っているというわけです。”安くて手軽”という価値以上のものを生み出して、時代にあったものへと昇華する必要がありそうですね。
■多様化を図るか、本気で勝負するか
そもそも寿司ネタの価格は上昇傾向にあります。サーモンの価格は、2010年は1キロ773円でしたが、2014年には974円にまで上がっています(貿易統計)。回転寿司の原価率は40~50%。一般的な飲食店の30%よりも、原価率が高いことが特徴です。今まで以上に原価が上がれば、「やってられんがな」となるわけです。
しかも、大手御三家スシロー、カッパ、クラが市場の55%を占める寡占化が進んでいます。ブランド認知、FC展開もそう上手くはいかないでしょう。
となると、もう寿司なんて本当にやめてしまえばいい、と思うわけです。最近の女子高生は放課後、回転寿司店にくるらしいので、パフェだのシュークリームだの流行りのわたあめだのを、ぐるんぐるん回してしまえばいいのではないかと。業態転換の上手い会社が運営を担うのですし。
もしくは寿司本来の直球勝負が時代にあっているのかもしれません。元気寿司の「魚べい」はタッチパネルのフルオーダー制を導入しました。スシローも「七海の幸 鮨陽」を開発。回らないレストランタイプのお店となっています。
ガーデンが取り仕切る「かいおう」がどんな道を歩むのか、楽しみですね。