ビールを飲む理由

飲食店オーナーを目指すサラリーマンが、日々収集したフードビジネスやサービス業についての情報を書き込む備忘録

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ただいま、私の最新記事は「M&A Online」にてお読みいただけます。

飲食・ホテル・婚礼業界の企業買収ネタを軸に、コラムやニュース記事を執筆中です。

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このサイトの記事に興味がある方はご覧いただければと思います。2か月に1度の頻度で寄稿しています。

宜しくお願いします!

中目黒高架下開発計画のテナントが出揃ったところで実際の賃料を見てみる

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要点:東急電鉄が1600億円もの費用を投じて開発を進めるプロジェクト!「渋谷再開発」の、裏でひっそりと進められていた中目黒の高架下開発計画。中目黒駅の真下の空間約700メートルを、店舗・事務所など40区画に分けて貸し出そうというものです。28のテナントがすべて出揃い、いよいよ11月オープンとなりました。中目黒の駅直結という好立地、気になる賃料はどんなもんですか、「でも、お高いんでしょう?」という話です。

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■高架下物件の平均坪単価は26,500円前後でした、普通ですね

 高架下の開発が流行っているのをご存知でしょうか?有楽町、新橋、上野のような「ドヤ街」的なイメージは今では払拭されています。秋葉原・御徒町間阿佐ヶ谷アニメストリートのような文化発信場所になっているのです。

 東急電鉄も高架下開発を進めており、武蔵小杉、都立大学を次々と賑わい創出の場として作り変えました。そして11月に中目黒の案件がオープンするのです。

 

▼計画概要はこんな感じ

敷地面積:約8,300㎡
延床面積:約3,600㎡
所在地:東京都目黒区上目黒一丁目、二丁目、三丁目 ほか
用途:店舗・事務所、駐輪場等
交通:東急東横線東京メトロ日比谷線「中目黒」駅
開業予定:2016年11月
設計・監理:株式会社東急設計コンサルタント
施工:清水建設株式会社
商環境デザイン:株式会社丹青社           
中目黒駅1日平均乗降人員(2015年度)
東急東横線:191,065人(前年比+1.6%)
東京メトロ日比谷線:221,142人(前年比+2.6%)

 

▼テナント

 飲食店が中心ですが、蔦屋書店、アパレルなども出店するみたいですね。

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※店舗の詳細はブログの最後で

 さて、賃料です。平均すると、坪単価2万6500円ほど。中目黒に出ているテナントの料金とさほど変わらない金額。駅直結だということを考えると悪くありません。

 28のテナントすべてが出揃ったというのは表向きの話。実は上図のアルファベット、I、J、K、の「ナカメギャラリーストリート」は正式なテナントではなく、絶賛募集中の案件です。

▼区画Iの金額

面積:195.56㎡(59.15坪)

天井高:3010mm

賃料:1,478,000円

▼区画Jの金額

※5つに細分化された物件の一つ

面積:47.67㎡(14.42坪)

天井高:3080mm

賃料:389,000円

 と、こんな感じになっています。興味のある方はこちら

 難点があるとすれば、改札口から若干離れた場所ということですかね。このあたりの区画は、住宅街の方に近いです。

 それにしても、結構な物件がまだ残っています。東急電鉄側からすれば、もともと死んだ土地。それほど急いでテナント集めをしなくてもよかったのかもしれません。そのあたりも高架下を開発するメリットの一つですね。

 

▼すでに決まった店舗の詳細

【窯焼き料理とワインの専門店】PAVILION(パビリオン)(新業態)
出店者:株式会社スマイルズ
すべての食卓が作品になるコンテンポラリーフード&リカー。
ひとたび店内に入ると、著名なアーティストによる巨大な作品群が佇む異空間へ。食卓には希少肉の窯焼き料理をはじめ、作品のような料理が並びます。高架下に広がる個性的な客席とさまざまな仕掛けが、ここにいる人たちの距離を縮めます。ここだけでしか体験できない、最愛なる晩餐を。

【オールデイダイニング】GOOD BARBEQUE (グッド・バーベキュー)(新業態)
出店者:株式会社アキナイ
本質を求める人々が集う街、中目黒。中目黒高架下のお店は、CRAFT(手作り)をテーマに、塊の肉をオリジナルスパイスで味付けし、長時間掛けてじっくりとスモークしたアメリカンバーベキュースタイルで提供。食事にはクラフトビールを合わせ、食後にはクラフトカクテルを楽しむ、これからのクラフトスタイルを提案します。

【スープ専門店】Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー
出店者:株式会社スープストックトーキョー
全国70店舗を展開する「食べるスープ」の専門店。素材が持つ自然な味わいをお楽しみいただくために、化学調味料などに頼らず、手間隙をかけ、素材の特長を生かしたおいしいスープ作りにこだわっています。
季節とともに週ごとに変わる種類豊富なスープのほか、カレーのメニューもご 用意します。

【アパレル・雑貨】MHL(エムエイチエル)
出店者:株式会社アングローバル
英国のブランド、マーガレット・ハウエルのカジュアルラインMHL。ワークウェアやユニフォームから影響を受け、機能性と実用性をキーワードにシンプルでモダンなデイリーウェアを提案します。「中目黒において気軽に女性が一人で来店できる」をコンセプトに、ウィメンズウエアを中心に雑貨も充実した品揃えとなっています。

【フレンチトースト】LONCAFE STAND NAKAMEGURO(ロンカフェ スタンド ナカメグロ)(新業態)
出店者:株式会社湘南ライセンス
リゾートライフよりも日常の中にリゾートタイムを。
「湘南スタイル」=「海・自然・リゾート」を基本とした、中目黒らしいちょっとオシャレなテイストの店舗です。日本で初めてのフレンチトースト専門店と言われており、外はカリカリ、中はとろりとした新しい触感のスイーツ、本場フランスの「パンペルデュ」を再現します。
また、夜はシャンパンバーとなり、今までのロンカフェとは違う大人の空間とお酒に合う料理もご用意。駅の高架下の立地を生かし、帰る前のデザートフレンチトーストと、中目黒の新しい食後のルーティンを提案します。

【書籍・雑貨・カフェ】中目黒 蔦屋書店
出店者:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
中目黒の待ち合わせ場所として、合間の休憩場所として、カフェを楽しみながら、書籍や雑誌を読んだり、イベントに参加したり、ギフトに雑貨や文具を選んだり、クリエイティビティを刺激する時間と空間を提供します。

【フラワーショップ】青山フラワーマーケット
出店者:株式会社パーク・コーポレーション
「Living With Flowers EveryDay(リビング ウィズ フラワーズ エブリデイ)」をコンセプトに花や緑に囲まれたゆたかなライフスタイルをご提案。パリのマルシェをイメージした店内には、産地にこだわった季節の花が並びます。生活シーンごとにご用意したライフスタイルブーケや、旬の花々で日々の暮らしに潤いと彩りを添えませんか。

【ベーカリーカフェ】THE CITY BAKERY(ザ シティ ベーカリー)
出店者:株式会社フォンス
ニューヨーカーから20年以上愛され続けているベーカリー「THE CITY BAKERY」が2013年の大阪、品川、広尾、2015年の福岡、2016年3月の銀座に続き、中目黒にオープン。
オーナーベーカー、モーリー・ルービンによるプレッツェルクロワッサンをはじめとするニューヨークの味に加え、日本オリジナルのパンやデリなど、豊富なラインナップをお楽しみください。

【ワイン&チーズ専門店】ヴィノスやまざき
出店者:株式会社ヴィノスやまざき
全国でも珍しい直輸入型ワイン専門店。現地で買い付けた400種類以上の直輸入ワインを専門スタッフが販売します。また、直輸入のチーズやワイン雑貨など、ワインライフを彩るアイテムを豊富に取り揃えています。毎週末に、試飲イベントも開催。おすすめの旬なワインや新入荷のワインを、相性ぴったりの厳選チーズや美味しいパンと一緒にお楽しみいただけます。

【カレー専門店】井上チンパンジー(新業態)
提供スピードとまろやかさの中にあとからくる辛さがヤミツキになる味を売りにし、10種以上のスパイスを使ったオリジナルの生姜焼きカレーで中目黒のお洒落に敏感な方々の心をつかむ味に仕上げました。カフェを思わせる空間で、男女問わず毎日でも来たくなる普段使いの出来るお店をコンセプトにしています。

【焼きそば・からあげ】らんまん食堂(新業態)
出店者:有限会社ハレノヒ
実は、一人で気軽に飲んだりご飯を食べたりするお店が少ない中目黒。
そんなナカメに、食堂をイメージした店舗がオープン!!
シンプルでカジュアルな店内で、焼きそば、からあげ、ポタージュ、レモンサワーを提供します。ふらっと立ち寄る「ちょい飲み」でも利用可能です。

【おでん】鶏だしおでん さもん(関東初)
出店者:株式会社のむら本店
中目黒の「焼鶏あきら」、「水炊きしみず」で有名な清水明氏の全面プロデュースのお店です。コンセプトからデザイン、メニュー、サービスなど細部にいたるまで全てに清水氏がこだわり抜いた傑作です。独自に選び抜いた鶏ガラと色々な野菜を長時間煮込んだコラーゲンたっぷりの鶏だしで味わうおでんがメイン。鶏串や、定番の大根やはんぺん、大人気の半熟卵など、鶏だしの旨味がしみ込んだ具材をご堪能ください。また、厳選した地酒やワインなども豊富に取り揃えています。

【グリル&カフェ】アサドール・デル・プラド(新業態)
出店者:株式会社PBJapan(ピービージャパン)
炭火焼料理とタパス・ピンチョスなどのスペイン風前菜を提供し、気軽に立ち寄れるスペインバル。昼はカジュアルなランチ、カフェタイムにはスペイン直輸入のスイーツ、夜は世界中の有名レストランで使われているスペイン製炭火焼マシン「JOSPER(ジャスパー)」でグリルした最高級「石垣牛」ステーキや、新鮮な海鮮や野菜などのグリル料理をご堪能いただけます。

【うどん居酒屋】二○加屋長介(ニワカヤチョウスケ)(関東初)
出店者:株式会社トランジットジェネラルオフィス
東京初上陸!グルメタウン博多で大ブームの「うどん居酒屋」の代表格、「二○加屋長介」。質にこだわった80種のおつまみ、そして〆にはコシのある手打ちうどんと、メニューは多種多彩です。人気NO.1は博多名物でもある極上の水炊きをベースにした「鶏スープあつかけうどん」。

【スペインバル】Caldo NAKAMEGURO(カルド ナカメグロ)(新業態)
出店者:株式会社アイアンインテンション
上質なレストランの味を気軽なバル形式で提供します。料理は素材にこだわり、日本人が大好きな米(arroz)をうまみたっぷりのスープで仕上げたスペイン雑炊(カルドソ)などがオススメの一品。

【立ち鉄板】鉄板焼 芯 立ち呑みや(新業態)
出店者:有限会社芯
16年間恵比寿で個人経営している鉄板焼き店の分店が初めて出店します。目の前で調理する立ち飲みスタイルで、外国人も喜ぶバル要素の和洋折衷の内装が特徴。小ぶりなお好み焼きと上質素材の酒肴が売り。

【寿司】寿司の磯松
出店者:有限会社松風堂
ノスタルジックな和空間で、伝統の江戸前寿司をリーズナブルな価格で味わえる「普段使いなごひいきのお店」がコンセプト。江戸前寿司のみならず、天ぷらからお刺身まで、江戸前の職人の仕事が加わった旬の食材が味わえるお店です。

【立食い焼肉】治郎丸
出店者:株式会社MUGEN(ムゲン)
少人数で“うまい肉”1枚1枚に向き合い、お好みの肉を堪能してほしい・・・
そんな思いから“立ち食い焼肉治郎丸”は誕生しました。扱う肉はすべてA4ランク以上のもの。お好きな部位を一切れずつ注文できるため、好きな部位を好きなだけ食べられるところも、お店の魅力です。

【のどぐろ・牡蠣・日本酒バル】NODOGUROYA KAKIEMON(ノドグロヤ カキエモン) (新業態)
出店者:株式会社MUGEN(ムゲン)
世界三大漁場の1つ三陸・宮城の4つの漁場から産地直送で味わいの違う牡蠣を中心に仕入れます。全国各地から取り寄せた牡蠣の料理と、近年人気の高級魚のどぐろをお手ごろな価格で提供します。牡蠣・のどぐろ・日本酒が大好きな方が、肩ひじ張らずに気軽にカジュアルに楽しめる大人の日本酒バルです。

【アジアン餃子】原宿餃子樓 ハノイの風(新業態)
出店者:株式会社ペニーレーン産業
アジアン風にこだわり、生春巻きやパクチー餃子などが並びます。
原宿餃子樓の餃子をベースに、アジアの香りがする多国籍料理を展開。終電まで営業しているところも中目黒ならではです。

【ラーメン屋】つけ麺や 武双
出店者:株式会社ティーエッセンス
鶏と魚介のWスープ濃厚鶏魚介つけ麺と、国産鶏と洋風スープのWスープ洋風鶏白湯つけ麺の2種類をスタンバイ。オリジナル特注麺は、国産小麦「春よ恋」を使用しており、麺の風味旨みを十二分にご堪能いただけます。

【日本酒&炉端焼き】炉端のぬる燗 佐藤(新業態)
出店者:東京レストランツファクトリー株式会社
北海道から沖縄まで全国47都道府県の日本酒が150種類以上を取り揃える日本酒専門店。ちょい飲み(90㏄)でさまざまな日本酒を堪能できるところがポイントです。新鮮野菜と共に季節を味わうことのできる「野菜巻き串」や、魚介、鍋料理など、日本酒の魅力をさらに引き立てる料理をご用意します。

【イタリアン】原トリッパ製造所(新業態)
出店者:株式会社ティーエッセンス
牛の内臓「トリッパ」を使ったイタリアのモツ煮込み屋。元白金台ルクソール、広尾イルメリオなどで腕を振るった原シェフが提供する薪の香りの炭焼き料理と、日本各地を回り厳選した日本ワイン、日本酒、焼酎とのマリアージュが楽しめるお店。店内奥に広がる秘密の洞窟もお楽しみください。

【酒亭】中目黒伍燗 GALLERY亀八堂(ナカメグロゴカン ギャラリーカメハチドウ)(新業態)
出店者:株式会社シンパチコーポレーション
14席程の少しゆとりのある店内には、絵画や器、骨董などをレイアウト。
お食事と一緒に贅沢な雰囲気をお楽しみいただけます。メニューは肉料理をメインに国産の食材を使用した料理を提供。また、料理1品ごとに、熟成した純米酒や日本ワインを合わせて丁寧に説明します。

【小料理屋】おばんざいソウル小町(新業態)
出店者:株式会社T・S・E
生粋のソウルの小町が腕をふるう!!
自慢の一品はチヂミ盛り合わせ、プルコギ、コムタンなど。ソウルおばんざいが堪能できます。

【オフィス・ショップ】NAKAME GALLERY STREET(ナカメ ギャラリー ストリート)
貸主:株式会社リアルゲイト
最大天井高4mを超えるダイナミックなスペースに、各店舗が自由に設計した大小さまざまなオフィスやショップが出店します。あらゆるクリエイターが集い、個性を発信する創造の場が誕生します。
デザイナー、スタイリスト、アーティスト、フォトグラファーたちの、オフィスやサロン、インテリア、ショールームなど、個性豊かなショップそのものを作品と見立て、中目黒高架下の一角が
「NAKAME GALLERY STREET」と呼ばれるように思いをこめています。

 

入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-

入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-

 

 

大戸屋のお家騒動を村上春樹風にまとめてみる

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画像:大戸屋金沢

はじめに:大戸屋ホールディングスがお家騒動に関する、第三者委員会の凄まじい報告書を提出しました。雪国まいたけ、大塚家具どころの騒ぎじゃないです。報告書の方も内容をまとめきれずに、物語風になっているあたりも最高です。渦中にいるのは創業者の息子・三森智仁氏(27歳)。報告書の内容を一部村上春樹風にアレンジすると、何だか三森智仁氏の心境にぴったりな気がします。なので、一部を取り出してリライトしてみました。ちなみに報告書の中で、三森智仁氏の「僕はこうしたい!」という意思らしいものは見当たりません(そのあたりも村上文学によく合う)。

お家騒動の簡単な経緯:大戸屋ホールディングスは、三森久美氏が一息に育て上げました。定食屋を、女性も気軽に入れる雰囲気にして大成功を収めたのです。町の定食屋はまたたく間に上場企業へと変貌を遂げました。久美氏は息子の智仁氏を次期社長にと望んでいましたが、なにしろ20代と若い。そこで三菱信託銀行に勤めさせた後、大戸屋の社員として招き入れることにしたのです。そんな中、社長に抜擢したのが窪田健一氏。甥っ子です。窪田社長は、会社を久美氏の影響力から解き放ち、海外展開など新たなビジネス構築を目指しました。運命の日は2015年7月27日にやってきました。三森久美氏が肺がんにより急逝したのです。創業者一家は窪田氏を「会社の乗っ取りだ」と罵り、息子の智仁氏を社長にしようと画策するのでした……。

「やれやれ」

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画像:ANA WALLS

■衝撃の内容①:度重なる三森智仁氏の経営会議欠席

 報告書21ページにこんな記述があります。

「智仁氏は、経営会議にもほとんど出席をしていない。取締役会には一応出ていたが、取締役としては如何なものかという状態」

 おいおい、跡継ぎ候補の取締役(息子)が経営会議に出ないのかよ。というツッコミが入りそうですが、村上春樹風にすると洒落た雰囲気が出るから不思議。

村上春樹

 僕はシルクスクリーンに絵の具を垂らしたような夕陽を見ながら、南極のペンギンが氷の上で寝転ぶ姿を想像していた。そのとき僕の意識は、目の前に広がる海辺を漂っていたのかもしれないし、遠く氷の世界に閉じ込められていたのかもしれない。一つだけ確かなことは、その日の経営会議にはいなかったことだ。

「会社では大事な立場にいるのに?」

 ミミはたずねた。それはサンドイッチにタマネギが入っていないことを、たしなめるような言い方だった。

「確かに」

 僕は指をパチンと鳴らして答えた。

「僕は資本主義社会における雪かきに参加しなかった。そこに僕という存在が本当に必要なのかどうか、確信が持てなかったからだ」

「資本主義的雪かきに?」

「そう。アルバート・アイラーのレコードに針を落とすとき、一瞬の迷いが生じるのと同じ心境と言い換えられるかもしれない」

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画像:冠婚葬祭研究所

■衝撃の内容②:骨壷事件

 報告書13ページの内容は衝撃的です。

「27年9月初旬に三枝子夫人が突然に大戸屋を訪れ、社長室の机上に久実氏の遺骨を置き、窪田氏に対し、『主人があなたを見ている。窪田、社長を辞めなさい。そして、智仁を社長にしなさい』と迫った」

 創業者一族が遺灰を会社に持ち込んで、社長交代を迫るという暴挙に。中上健次もびっくりの家族の愛憎劇ですね。これを村上春樹風にアレンジすると……。

村上春樹

 あれは西武ライオンズ森友哉が、オールスターで初のホームランを打った年だったと思う。僕と三枝子は痛みを伴う激しいセックスの後、マセラッティで会社へと向った。車中、僕は羊が群をなしたような雲を見ながら、朝方の雨を予感していた。

 三枝子は、社長室の中心にあったマホガニー製の机に骨壷を置いた。むきたてのグレープフルーツのような色のその壷を、窪田はまじまじと見つめていた。世界の秘密がその中に隠されているかのように。

 僕はひどく居心地が悪い思いをしながら、代々木公園で拾ったクルミをポケットの中でぎゅっと握りしめていた。

「あなたはヒエラルキーを形成するタイプじゃないわ」

 三枝子は言った。知識豊富な図書館司書が、ドストエフスキーの小説を抱えた少年にその難しさを伝えるような言い方だった。

「君たちが、首を突っ込む問題じゃない」

 窪田は突っぱねた。

「この壷を見なさい。ここにいるのが、本当に私と彼だけだと言い切れる?」

 長い夜になりそうだった。やれやれ。

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画像:ぐるなび

■衝撃の内容③:寿司屋5時間激詰め事件

 7ページ目もまたすごい。

久実氏は、ふざけるなと。激怒どころでなかった。濱田寛明専務も窪田社長も皆怒鳴り散らされた。寿司屋で5時間。

 久美氏は功労金をよこせと経営陣に迫りました。5億円もの功労金を支払うなど株主に説明できないと、要求をとりさげようとしたのです。

村上春樹

「あれは傑作だった」

 僕は行きつけのバーでカティ・サークを飲んでいた。店の中はビル・エヴァンスが演奏する「いつか王子様が」が流れていて、僕はパスタの茹で加減が絶妙だったときのように、少しだけ気分が良かった。だから柄にもなく、あんな昔話をしたのだと思う。隣には大学時代の同級生、ネズミ男が座っていた。

「ヒサミは自分という存在を、何とか周りに認めさせようとしていたんだ」

「自分の存在を?」

「自分自身の地殻に閉じ込められた、一種の流れを感じていた」

「おいおい、そいつはひどく分かりにくい」

 ネズミ男はそう言って、ブラジルから輸入されたナッツを奥歯で噛んだ。僕はネズミ男がイライラしていることに気づきながらも、遠回しな言い方を続けていた。

「つまりマグマさ。ヒサミは怒りという手段でしか、自分を表現できなかった」

「50代の男がすることじゃない」

「その通り。投資銀行のトレーダーが億単位の資金を失っても、あんな怒り方はそうしない。それも分が悪いことに、ヒサミがいたのは銀座の寿司屋だった。隣の席ではドイツの老夫婦がコハダを食べていたんだ」

「コハダだって?」

ボツワナで採れたプラチナの原石のように光っていたよ。彼らはいたたまれない顔をしながら、コハダを残して店を出ようとしたんだ」

 ネズミ男は話の続きを待っていた。

「僕は言ったんだ。アウフ・ヴィーダーゼン

「アウフ・ヴィーダーゼン

 

なんのこっちゃという感じですが、興味深い内容ですので報告書をぜひご一読ください。

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

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日和産業(2055)にみる国内畜産農家減少と業界再編の動き

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画像:生協コープかごしま

要点:西日本地盤の飼料メーカー日和産業のIRに「債権の取立不能」のお知らせが続々と舞い込むようになりました。いわゆる不良債権です。10月3日に鹿児島県の養鶏場、5月5日に長崎県の養豚場、養鶏場の売掛金不良債権化しています。こちら3件で8億9500万円が不渡りになった計算。貸倒引当金(不渡りを見越して予め帳簿にのせておくお金)を設定しているため、業績に影響は与えないとのこと。いや、そうじゃなくて。バッタバッタと倒れる畜産農家を救う、飼料から流通までの抜本的なビジネス改革期が迫っているのではないでしょうか。一世を風靡した6次産業化とやらの期待感も消えかかっていますし。しかも、ほら、奴らがくるよ。黒船に乗って関税撤廃を求める黒き衣を纏いしTPPが、という話です。

 

■肉用牛の飼養戸数は昨年比5.4%減少の5万4400戸

 農林水産統計によると、平成27年の肉用牛の飼養戸数は昨年に比べて3100戸減の5万4400戸。4年前に比べて、1万5200戸の減少となっています。豚、鶏ともに年間3~5%の割合で減少を続けています。

 日和産業は10月3日に鹿児島県の釘田養鶏場の売掛債権4億6200万円の取立不能、または遅延の発表をしました。今年に入ってこれで3度め。不渡りになった合計金額は8億5900万円にのぼります。

 釘田養鶏場(上部写真)は生協コープかごしまとの取引があり、食へのこだわりや安全性に関するインタビューに答えています。経営は娘婿さんが引継ぎ、娘さんは直売所・ケーキショップを運営していた様子。国内からこうした畜産農家が消えてしまうのは残念ですが、個人経営で生き残るのは難しいです。

 理由は3つ。

①飼料価格の上昇

②6次産業化という甘い罠

③関税撤廃の世界的な波

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■飼料価格は5年で21%増加

 飼料価格の上昇が止まりません。平成22年の成鶏用飼料価格は1トン6万円台で推移していましたが、27年には8万5000円台にまで高騰しています(約21%UP)。

 理由は大きく2つあります。一つは為替の影響。2014年の急激な円安により、原料となる穀物の仕入れ価格が上昇しました。最近の円高で若干価格の戻りが期待できるものの、すでに大量の仕入れをしてしまったことを考えると、急激に下がるとは思えません。

 もう一つは新興国穀物需要が旺盛だということ。中国は2009年にトウモロコシの受給が反転し、輸出から輸入に転じています。インド、ロシアの需要も拡大傾向にあります。

 日本政策金融公庫によると、畜産経営において飼料費は、なんと売上の40~70%を占めています!人件費、光熱費を入れたら何も残らないどころか赤字状態。しかも管理がしづらい生き物の商売で安全に対する配慮が必要なことから、生産効率を上げるのが極めて難しい分野なのです。補助金頼みになるのも、ある意味仕方がないのかもしれません……。

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画像:宮城県6次産業化サポートセンター

MBAを持つくらいのレベルじゃないと、6次産業化はムリだと思います

 2000年に入ってから、6次産業化という言葉をしきりに耳にするようになりました。生産(1次産業)、加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)までを一貫してやってしまおうという経営形態です。酪農家が直売所でソフトクリームとかを販売するアレです。

 6次産業化は農林水産省が農家に対して推進している上、コンサルティング会社が出てきたりして個人経営者が手を出した時期がありました。

 生産者が大掛かりな6次産業化に手を出したとしても、99%失敗すると断言できます。なぜか。普通の生産者は経営ノウハウを持っていないからです。

 6次産業は難易度の高い「B to C」ビジネスの経営者になることを意味しています。人材、在庫、品質、販管費などのマネジメント、マーケティングは必須。家族経営の生産者が一朝一夕でできるものではありません。初期投資も同じ。補助金で資金を得られたとしても、投資回収のロードマップは引けません。回収の見込みがないまま、怪しいコンサルタントの言いなりになって「6次産業化じゃい!」と参入してしまう人が多かったのではないでしょうか(コンサルタントは投資資金の10%を懐に入れてドロン、というわけです)。

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画像:ウィキペディア

TPPにより輸入牛肉の関税は38.5%→9%に

 さあ、やってきましたTPP。政府の試算では、TPPが発効することでGDPは2.6%増加、2014年度の水準で14兆円の拡大効果があるとしています。雇用も80万人増が見込まれ、輸出大国日本の面目躍如といったところ。

 カウンターパンチを喰らうのが日本の農業。牛肉の関税が現行の38.5%から9%に無制限で輸入されることになります。国内の牛肉生産額は2000億~3000億円減るという分析も。畜産業の赤字の80%は、国の補助金で賄う仕組みになっています。畜産業界全体が骨抜きになってしまいそうな構図ですね。

■商社の花形は資源から食料部門にシフトするかも

 そんな不安とは裏腹に、食料業界は巨額のカネが動く劇的な変化を起こしています。

 伊藤忠商事三菱商事三井物産を抑えて、2016年3月期の決算で業界No.1に輝きました。背景には資源価格が暴落し、過剰投資していた三菱や三井が大打撃を受けたのです。食料を柱とした非資源ビジネスで、着実にヒタヒタと走っていたのが伊藤忠でした。

 原油を中心とした資源価格は、しばらく停滞期が続くはずです。中国景気が勢いを失った上、過剰生産した原材料が(腐るほど)余っているからです。しかも、アメリカが開発を進めたシェールオイルは、原油価格が上がるタイミングを今か今かと狙っています。

 商社の花形は資源から食料へと移るかもしれません。これまで、資源部門に配属された社員はその部署で一生働くのが普通でした。そしてその人は羨望の的だったわけです。ところが、今は資源から食料、繊維などへの異動が普通になりつつあるようです。

 三菱商事がローソンを1440億円で買収した件。大手商社が非資源ビジネスへと舵を切った象徴的な出来事でした。これこそ第6次産業化です。

 2015年2月には丸紅系とJA系肥料会社が合併、7月には伊藤忠飼料と中部飼料が提携しました。畜産や飼料、肥料業界は寡占化が進行しています。

 大手商社による超巨大な6次産業化が、日本の畜産を支える時代がくるのかもしれません。

 

動物の飼料

動物の飼料

 

 

福証のジョイフル(9942)は狙い目銘柄か?

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画像:ジョイフル

要点:東京には3店舗しかなく、その希少価値からレアポケモンが出ることでプレーヤーの聖地となったジョイフル(嘘です)。実は全国で768店舗展開する、ファミリーレストラン業界3位の強者です。この会社、福証なのでほとんど知られていませんが業績回復が著しいです。上期の連結経常利益は前年同期比63.4%増の13.7億円に拡大。通期計画の進捗率は62.5%に達しています。しかも「ごはん処 喜楽や」という新業態を開発し、分社化して拡大を狙っている模様。投資家の間では株主優待ばかりが取り沙汰されますが、実は狙い目銘柄なのでは、という話。

 

■エリア毎の分社化により、意思決定が素早く行える体制に

 ジョイフルは経営改革に乗り出しているように見えます。2015年12月期の売上高は前期比5.9%増の628億8000万円。経常利益は10.9%減の21億8700万円でした。

 このとき、投資額を抑えた新型直営ジョイフルを31店舗出店。直営10店舗を退店しています。新規投資と退店費用により、利益が抑え込まれた形。

 そんなわけで、予想どおり2016年12月期第2四半期の業績は回復しています。こんな感じ。

▼経常利益

・16年12月期第2四半期 13億7400万円(前期比63.4%増)

・15年12月期第2四半期 8億2400万円(前期比27.7%減)

 通期計画に基いて下期の経常利益を試算すると、前期比38.6%減の8.2億円落ちこむ計算になります。外食は下期の方が利益は伸びる傾向にあります。すなわち、近々上方修正する可能性もあるということですね(今期は1度上方修正していますが)。

 見事に15年12月期で膿を出し切ったように見えます。

 更に昨年10月、エリアごとに分社化して持株会社制に移行しました。目的は地域特性や人材に合わせた意思決定を迅速に行うこと。経営環境的にも安定感が出ます。

 

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画像:ジョイフル

■「ごはん処 喜楽や」は第2の稼ぎ頭になりえるか

 ジョイフルは新業態の「ごはん処 喜楽や」分社化の検討に入ったと9月10日に発表しました。次なる成長戦略にワンコイン定食業態を放り込むわけです。年内に地盤の大分県を中心に5店舗オープンを計画しています。「喜楽や」の特徴はこんな感じ。

▼500円でおかわり自由

 定食の内容はご飯、主菜、副菜、味噌汁、キャベツ、漬物、コーヒー

 ご飯、味噌汁、キャベツ、漬物、コーヒーはおかわり自由

▼24時間365日、いつでも500円

▼社食のようなカフェテリア方式なので、待ち時間がゼロ

▼主菜は「チキン南蛮」「塩サバ」など人気メニューが多い

 どうですか、サラリーマン、学生の味方といったこの充実の内容。なかなかのものだと思います。

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画像:ジョイフル

■ワンコイン定食という穴場業態

 つい最近、この記事で安いだけの店はダメだ的なことを書きました。それは基本的に変わらないのですが、未開拓の業態は別だと考えています。

 ワンコインというと牛丼、うどん/そば、カツ丼、天丼などが浮かびます。チェーン系でワンコイン定食を提供しているところが、意外にも見当たらないのですよ。大戸屋やよい軒宮本むなしは、メニュー内に500円のものがあったとしても、均一ではないですね。

 そんなわけで、この業態はそこそこ流行るのではないかと思います。不動産価格と人件費を考えると都市部の出店はムリそう。なので、地方のロードサイドから攻めることになるでしょう。ブランドを確立したら、FCで横展開ですね。直営店が薄利だったとしても、FC展開が成長戦略の柱になるかもしれません。

 株価は1100円でほぼ横ばい。PER36倍、PBR2.1倍。どうも買うことに踏ん切りがつかないのは、福証だからですよね、やっぱり。

 

ザ・リバティ 2016年 10 月号 [雑誌]

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回転ずし「かいおう」が倒産、中途半端な店は生き残りづらい時代に

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画像:食べログ

要点:富山県発祥の回転ずしチェーン「かいおう」が8月末に倒産しました。負債総額は6億7000万円。都内では「お台場」などに出店し、一時期はFCを含め全国36店舗を展開。2015年1月期の売上高は19億1900万円(純損失は3000万円)でした。「かいおう」のFC事業は、M&Aや経営支援を行う経営戦略合同事務所(KSGグループ)が譲受。事業再生のパートナーとして、「神戸らんぷ亭」などを運営する株式会社ガーデンを選びました。安くて手軽だけがセールスポイントのこの手の回転寿司店を、本気で建て直すのは相当難しいです。回る「わたあめ」とか「パフェ」に業態変更して、新しいマーケット開拓に動いた方が稼げそうじゃないですか、どうですか、そうですか、やっぱりダメですか。それなら、せめて回らない寿司で本気の勝負はどうですか、という話です。

 

■「安さ」から「質」への転換期に誕生した「かいおう」

 「かいおう」は2007年に富山県で誕生した回転寿司店です。一皿100円、150円(一部180円)の2段階設定でファミリー層の取り込みに成功しました。安さと分かりやすさが”うけた”わけです。

 このとき日本は、深刻なデフレ局面からの転換期を迎えていました。マクドナルドのハンバーガーが80円だったのが2006年ごろまで。2007年からは地域価格が導入されて、場所によっては100円になっています。牛丼が350円から380円に値上げしたのもこのころ。

 安く、たくさん、という消費者意識は薄れ、ちょっといいものをそれなりの値段でと思う人が増えていました。ちなみに、プチ贅沢の王様「プレミアムモルツ」がエビスビールを抜いて市場を席巻したのが2008年ごろです。安さが注目されていた時代が終わりを告げる、ちょうど潮目に誕生した会社でした(名前が海王とは皮肉なもの)。

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画像:食べログ

■36店舗出店するも、ダメでした……

 この手のお店は、(地銀とかの借り入れが上手くいけば)そこそこいくんです。FC展開にも乗り出し、全国36店舗に拡大しました。関東、東海、近畿、沖縄にまで出店しています。オシャレどころ東京お台場のヴィーナスフォートダイバーシティに手を出す冒険者っぷり。海王の名に相応しいですね。

 そんなこんなでピーク時には19億1922万円を計上。しかしながら、先細り必至な客数を劇的に伸ばそうと海を渡ったことが運命をわけたのです。身の丈に合わない海外への先行投資で失敗しました。

 このとき、FC事業に注力していたら、あるいは生き残っていたかもしれません。不動産、人件費のリスクヘッジができるビジネスモデルは強いですよ、やっぱり。社長はきっと、国内でちまちまFC事業に精を出すのが嫌になったのでしょう。

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画像:神戸らんぷ亭

■事業再生のカギは株式会社ガーデンが握りました

 「かいおう」がすでに展開しているフランチャイズ事業の支援を目的として、KSGグループが事業譲受しています。この会社はファイナンス支援やM&A仲介などを行っています。そして再生支援の中心的役割を担わせるため、株式会社ガーデンを引っ張ってきました。いわば、ガーデンが救世主なわけです。

 ガーデンは「神戸らんぷ亭」を、牛丼屋からラーメン屋へと急激に業態変更したことで有名。牛丼屋は銀座店を残すのみとなっています。

 この会社、求人を見ると何やら2018年の上場を狙っている様子。「かいおう」は上場の命運すら握っているというわけです。”安くて手軽”という価値以上のものを生み出して、時代にあったものへと昇華する必要がありそうですね。

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■多様化を図るか、本気で勝負するか

 そもそも寿司ネタの価格は上昇傾向にあります。サーモンの価格は、2010年は1キロ773円でしたが、2014年には974円にまで上がっています(貿易統計)。回転寿司の原価率は40~50%。一般的な飲食店の30%よりも、原価率が高いことが特徴です。今まで以上に原価が上がれば、「やってられんがな」となるわけです。

 しかも、大手御三家スシロー、カッパ、クラが市場の55%を占める寡占化が進んでいます。ブランド認知、FC展開もそう上手くはいかないでしょう。

 となると、もう寿司なんて本当にやめてしまえばいい、と思うわけです。最近の女子高生は放課後、回転寿司店にくるらしいので、パフェだのシュークリームだの流行りのわたあめだのを、ぐるんぐるん回してしまえばいいのではないかと。業態転換の上手い会社が運営を担うのですし。

 もしくは寿司本来の直球勝負が時代にあっているのかもしれません。元気寿司の「魚べい」はタッチパネルのフルオーダー制を導入しました。スシローも「七海の幸 鮨陽」を開発。回らないレストランタイプのお店となっています。

 ガーデンが取り仕切る「かいおう」がどんな道を歩むのか、楽しみですね。

 

自分の会社を廃業する手続のすべて

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経常利益を20%上方修正したモロゾフ(2217)はチョコレートにもっと注力するべき

 

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要点:洋菓子の老舗モロゾフが8月29日の大引け後に上方修正を発表しました。17年1月期第2四半期累計の経常利益を従来予想の8.5億円から10.2億円に20%増額。増益率が51.5%から81.8%に急拡大します。併せて通期の経常利益も従来予想の15.3億円から17億円に11.1%上方修正。増益率が14.4%から27.2%に拡大する見通しとなりました。売上高の若干の上昇と、ナッツ原価の下落、人件費が予想を下回ったことが背景にあるようです。中期経営計画によると「チャレンジ」(どこかで聞いたような……)期間中のモロゾフ。時勢的にはチョコレートにもっと力を入れると良いのでは、という話です。

 

■株価は29日の終値426円から一時439年まで上昇

 29日の大引け後にモロゾフが上方修正を発表しました。

【平成29年1月期第2四半期】

▼売上高 138億5000万円(予想)→139億円(修正値)

▼営業利益 7億9000万円→9億6000万円

▼経常利益 8億5000万円→10億2000万円

【平成29年1月期通期】

▼売上高 288億5000万円→288億5000万円

▼営業利益 14億7000万円→16億4000万円

▼経常利益 15億3000万円→17億円

 売上高の上昇率はわずか。通期は増額していません。原価率改善による、利益の上昇ですね。ナッツ類の価格が下落傾向にあるとのこと。

 残念ながら原材料の価格推移に関する資料は見つからなかったものの、原油価格が1バレル50ドルを割って、45ドル近辺で推移していることを考えると、輸送コストも格段に下がっていることは容易に予想できます。

 モロゾフは洋菓子部門と喫茶部門に分かれていて、売上の構成比率では喫茶部門が6%。洋菓子部門が会社の業績を支えている構図です。

 28年1月期の決算によると、プリンや半生菓子の「ブロードランド」が好調な売れ行きをみせています。個人的にはチョコレートに力を入れると良いのでは、と思っています。

▼根拠 ※全国半生菓子協会調べ

赤:チョコレート→生産数量、小売金額ともに年々増加

黄色:洋生菓子→生産数量、小売金額ともに年々減少傾向

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 チョコレートのマーケットは拡大傾向にあります。

 少子高齢化の日本において、マーケットが拡大していることは驚異的です(葬儀、介護、高齢者住宅業界を除いて)。このチャンスを何とかモノにしたいものです。とはいえ、「マーケットの拡大=競争激化」なので、競合に勝つことが極めて難しいことも事実。

■チャレンジ期間でシェア拡大とブランド確立に動いてほしいモロゾフ

 菓子業界のモロゾフ売上高順位は11位。同業の不二家937億円(6位)に大きく水をあけられている状態です。

 裏を返せば、巻き返しのチャンスがいくらでもあるということですね。伸びしろがあるんですよ。ところが、モロゾフの長期経営計画は具体性に欠けた残念なもの。

 STEP1:CHANGE 期間2012年1月~2014年1月

 STEP2:CHALLENGE 期間2015年1月~2017年1月

 STEP3:CREATE 期間2018年1月~2020年1月

 今はチャレンジ期間に当たるわけですが、市場・商品・人材教育において新たな挑戦をする、というところまでで具体的な戦略はみえません。

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 モロゾフのような老舗企業の弱点は、本質的な部分で抜本的な改革ができないことだと思います。ビジネスモデルが、デパ地下店舗のリニューアル、新商品開発、POPを使った実店舗での集客戦略。この繰り返しです。

ブランディングSNS

 この会社のチャレンジ領域はマーケティングです。Cadbury Glowというギフト用チョコレートメーカーは、SNSを巧みに使った戦略で成功しました。2014年の時点で、Twitterのフォロワーは32万を超えているとか。モロゾフInstagramなどを使ったPR戦略を進めていますが、まだまだ弱いです。その証拠に、業績発表資料にSNSマーケティングの言及が一つもありません。

 モロゾフマーケティング戦略が、WebとSNSに切り替わったとき、本当のブレイクスルーが起こると予想しています。

 今回の上方修正は、利益率の改善が柱。これが売上の大幅な上方修正が起こったとき、何が何でも株を買っとけ的な動きになるわけです。マーケットは拡大中。その要素はいくらでもあるはずです。

 

「わさビーフ」したたかに笑う。業界3位以下の会社のための商品戦略 (アスカビジネス)

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