ウエディング企業はプラン・ドゥ・シーを超えることができないのかもしれない
要点:非上場企業プラン・ドゥ・シー。ゲストハウス型婚礼施設の嚆矢となった会社です。そのビジネスモデルを踏襲して日本中に広めたのがテイクアンドギヴ・ニーズ(4331)とノバレーゼ(2128)でした。中国への先行投資が失敗し、業績が悪化する一方のT&G、一歩一歩着実に歩みを進めるノバレーゼ。両社の命運はプラン・ドゥ・シーモデルの枠内に収まるか、飛び出すか。そこが分かれ目になっているようですね、という話です。
■中国への先行投資50億円の結果を”そっ閉じ”したT&G
テイクアンドギヴ・ニーズの業績落ち込みが勢いを増しています。28年3月期の売り上げ高は前期比0.4%増の595億2400万円だったものの、営業利益は48.8%減の15億4500万円、経常利益は50.5%減の13億7700万円でした。
今期は売上高600億円、経常利益15億円(8.9%)を見込んでいます。ゲストハウスを前期で2店舗オープンしているため、売り上げは600億に届くでしょう。しかし利益が出るかどうかは眉唾ものです。毎年婚礼単価・婚礼組数が落ち込み、新規事業であるホテルやドレスへの投資が膨らみそうだからです。
T&Gは2010年ごろから中国への積極投資に動きました。当時、中国の婚礼市場は2013年の時点で8兆円を超えると予想されていました。その1%でも獲得できれば800億円の売り上げになるというわけです。
市場規模は順調に拡大しているようですが、T&Gの中国ビジネスは鳴かず飛ばずの様子。中国の婚礼ビジネスには2つの大きな落とし穴がありました。
①:日本のゲストハウスで結婚式を挙げる理由がない
②:参入障壁が低く、簡単にマネできてしまう
中国人にとって、T&Gブランドは何ら影響力を持っていません(そもそも日本でもありませんが)。ヒルトンやマリオットと比較すれば、一目瞭然。現地の人にとって、そのブランドでどうしても結婚式を挙げたいと思わせる価値はありません。
そしてゲストハウス運営は単なる箱物ビジネス。大したノウハウはありません。すぐにマネされてしまいます。仮に、稼げるゲストハウスが1つできたとしても、周辺には似たような施設が、雨後の筍のように出てくるのです。
T&Gは2012年に50億円もの中国投資を行っています。ウエディング企業としては、異例の投資額です。
しかしながら、現在の成長戦略の中に中国の文字は消えています。代わりに台湾やインドネシアを重要拠点に据えています。が、それよりも国内事業の立て直し、ホテル事業への参入を高く掲げているようです。要するに、中国事業は大失敗し、その事実を”そっ閉じ”しています。
■プラン・ドゥ・シーモデルを踏襲したノバレーゼは堅調
一方、ノバレーゼは堅実に歩みを進めています。27年12月期の売上高は前期比6.1%増の153億7500万円、営業利益は16億600万円(10%増)、経常利益は16億7900万円(10%増)です。
ノバレーゼは中国を初めとした海外展開には興味を持っていません。国内の既存・新規施設への投資が中心です。そのため、婚礼単価が400万円後半と非常に高いです。受注組数が昨対で4.2%減の3139組と減少していますが、売上・利益ともに増加している背景はそこにあります。
ちなみに、T&Gの国内婚礼単価は400万円を切って、390万円にまで落ちました。海外にばかり目が向いて、国内のゲストハウスにヒト・モノ・カネが投下できなかったツケが回っています。
ノバレーゼは重要文化財に指定されている施設で結婚式を行う「文化財ウエディング」が人気です。金沢の辻家庭園や大阪の旧桜宮公会堂などです。単なる”箱”を用意するのではなく、”歴史”というストーリー性を盛り込みました。非常に優れた戦略だと思いますが、これはプラン・ドゥ・シーが先行して行うビジネスモデルです。
プラン・ドゥ・シーはカワブン・ナゴヤやソウドウ・東山の運営会社です。どちらも人気大爆発のドル箱です。2つの会場には共通点があります。歴史的な建物をリニューアルしていることです。カワブンは料亭、ソウドウは名家のお屋敷でした。
最近では、大阪市公館のガーデンオリエンタル大阪、元赤坂プリンスの李王家東京邸の赤坂プリンスクラシックハウスをオープンしています。どちらも、よくぞその場所を抑えたといったところですね。
■国内投資はロジカルシンキングが出した答え
プラン・ドゥ・シーは、ITやコンサルティング企業のようなロジカルシンキングが徹底されている会社として有名です。それまで婚礼業界の常識だった”お花畑”営業からいち早く抜け出しました。それが大成功の秘訣と言われています。
この会社、社員を毎年海外の一流ホテルやレストランに研修で送り込んでいます。それくらい海外事業には興味津々なのです。しかしながら、そちらへの投資はほとんど行っていません。
ロジカルに出した答えが、国内に留まっておけ、ということなのでしょう。
この会社のビジネスモデルを”いい意味”で超えられるかどうかが、婚礼業界の突破口となりそうです。ただし、T&Gのような悲惨な結果になる終わるリスクもはらんでいる、ということですね。
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