狂気の沙汰か、イスラム圏進出への布石か?海帆(3133)のムスリム完全対応「ゆずの雫 姫路駅前店」
要点:海帆(3133)は7月1日にムスリムに完全対応した居酒屋「ゆずの雫」をオープンしました。場所はなぜか姫路駅前。イスラム教徒が多いわけでも、ムスリム観光客が多く集まるエリアでもありません。今回オープンした店舗は、イスラム教徒向けの礼拝所まで店内に設ける徹底ぶり。「んなことやってる場合かよ!」と思うか「世界の潮流を見極めている」と見るかは、投資家次第、という話。
■28年3月期の営業利益を昨対で40.7%落とした海帆
「なつかし処昭和食堂」でおなじみの海帆ですが、前期は出店準備の遅れなどが影響して、業績は振るわない結果となりました。営業利益は1億3300万円(前期比43.7%減)。今期は微増の1億6900万円を掲げています。
昨年4月に上場し、2015年7月に株価は2288円の高値をつけましたが、業績悪化で現在は800円台。外食系上場ゴール企業としての地位を固めてしまった会社の一つです。
そんなわけで株主は「激おこ」なわけですが、なんと火に油を注ぐように、6月15日には新株予約権の発行を決定しました。既存株主の皆さんは怒髪天を衝いた(激おこぷんぷん丸だった)ことでしょう。
そんな中、7月7日に発表した内容がなんともキナ臭いものでした。
■礼拝所とお清めスペース完備の飲食店
ムスリムに完全対応した「ゆずの雫 姫路駅前店」をオープンするというものです。以下、詳細です。
▼ハラール認証食材に完全対応
ノンアルコール、ノンポーク、調味料に至るまでハラールに準拠した地元食材を使用。おすすめは「あなご天丼」です。
▼礼拝スペースとウドゥ(お清め)スペースを確保
姫路には礼拝スペースがありません。安心して立ち寄れる場所を設けることで、観光客だけでなく、留学生などの在日ムスリムも呼び込みます。
▼価格帯の目安
ランチ:1000円~1500円
ディナー:2000円~2500円
この発表を見たときは正直、「どんだけ頭の中がお花畑なんだよ、もっとやることあるだろ。市場から資金を調達してコレかよ?」と思ってしまいました。ムスリムの観光客が増えたとはいえ、当面メインストリームにはならないでしょうから。
しかしながら、今回の出店に協力したという一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会のページを見て気づいたことがあります。「ゆずの雫 姫路駅前」は2つの意味があるのではないか。
①:インバウンド、在日ムスリムの取り込み
②:ムスリム圏への出店準備
(③:やや怪しい団体に乗せられた)
本質的な狙いは②なのではないかと。
■世界人口の4人に1人はムスリムです
ムスリムは世界人口69億人のおよそ23%、1/4ほどを占めている巨大な商圏と考えられます。しかも人口は増え続けているので、マーケットは拡大中。様々な企業が中国・東南アジアからムスリム圏へと食指を伸ばしているのは事実。
海帆が本当に②を狙っているのであれば、今後の展開は面白いですね。ただ、目先の株価をどうするのかが気になりますが(個人的には今回の発表に②を盛り込んでもよかった気がします)。