吉野家は「ちょい呑み」事業をやめて牛丼に専念するべき2つの理由
要点:牛丼チェーン各社が参入を表明している「ちょい呑み」。吉野家では夜間の売上アップや空きスペースの有効活用など、メリットばかりが取り沙汰されています。が、実際はいい面ばかりでもなさそう。早めに見切りをつけた方が良いのではないかと思う理由は2つです。
①粗利率の悪化
②スタッフのオペレーションが重くなる
■約1200店舗のうち、360店舗が「ちょい呑み」を開始。ロードサイド店にも拡大
吉野家の成長戦略の一つ、「ちょい呑み」。ターゲットを中食と居酒屋のちょうど中間に据えた新しいサービスです。コンビニで缶詰とビールを買って家で一杯飲むのはちょっと寂しい、かといって居酒屋一人で2,000円は払いたくない。そんなニーズを拾いました。
神田店でテストマーケティングをしたところ、夜間の売上が40%アップし、赤字から黒字に浮上するという大満足の結果に。吉野家は「吉呑み」事業をすぐさま多店舗展開しました。2016年2月末の段階で、導入店舗は360。今後は都内だけでなく、地方のロードサイドにも導入する予定です。
吉野家の2016年2月期売上高は956億700万円。ちょい飲み事業により、前期比0.3%増という結果になっています。しかしながら……
■「ちょい飲み」をやめた方がいい理由①:メニューが増えることにより、食材評価損額が膨張
売上が良くても、利益が出せないのは飲食店でよくある話。吉野家もまさしくその状態。利益は30億5400万円、昨対で24.8%の減益です。店舗数においては1年間で36店舗新規出店し、30店舗を閉鎖しています。店舗数が激減しているわけではありません。減益には食材評価損が大きく影響しています。
ちょい飲みメニューには「マグロ刺身」や「メンチカツ」など、牛丼とは直接関係のない料理が20種類前後並んでいます。牛丼だけなら原価計算も楽ですが、これだけメニューが拡大すると見積もることが困難。吉野家ホールディングスは「はなまるうどん」やファミリーレストラン「フォルクス」を運営しているとはいえ、新規食材調達拡大で管理部門や現場は混乱したはずです。
この先、「ちょい飲み」を拡大し続ければ、メニューを更に細かく調整しなければなりません(例えば季節に合わせたものなど)。要するに面倒なのです。牛丼の価格調整だけで、集客を図っていたかつての”やりやすさ”がなくなってしまいました。自分で自分の首を絞めているようです。
■「ちょい飲み」をやめた方がいい理由②:オペレーションが複雑化し、スタッフは確実に疲弊します
牛丼店の深夜のワンオペレーションによるアルバイトの酷使が一時社会問題になりました。改善が進んでいるようですが、一部ロードサイド店舗などではアルバイト一人による運営形態が残っています。さらにちょい飲みが進むとなると、この先起こることが目に見えるようです。
1つは現場スタッフの更なる疲弊。そこから発展するブラック企業というレッテル。
もう1つはスタッフ増強による、人件費の増加。利益の更なる押し下げ。
■実は中長期戦略に明記されていない「ちょい飲み」
吉野家は4月11日に中長期戦略を発表しています。その中では「ちょい飲み」事業に対する言及は一切ありません。これは私見ですが、吉野家は飲み屋業態に明確なビジョンを描けていないのではないでしょうか?本当は牛丼だけのシンプルな業態だけで、今まで通り(楽な)ビジネスモデルを推し進めたいと考えているような気がしてなりません。それなら早く見切りをつけてしまえばいいのに……。
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【関連News】
吉野家ホールディングスが展開する「はなまるうどん」が好調。
売上高は215億10百万円と、対前年同期比10.2%の増収。 増収の主要因は、店舗数の増加と、4月からすべての天ぷらを「ヘルシー天ぷら」に切り替え、期間限定の「ヘ ルシー天ぷら定期券」キャンペーンが好調に推移したことや、11月からは映画「ちびまる子ちゃん」タイアップ企画 として「玉子あんかけフェア」等を実施したことにあるようだ。出店に関しては、駅前や駅ナカなどの新立地への出店や今後の出店余地の大きな北 海道や関西・九州地域への出店も進める。セグメント利益は、増収等により、11億58百万円と、対前年同 期比16.4%の増益。同期間の店舗数は、44店舗を出店し、13店舗を閉鎖した結果、390店舗となった。
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