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ビールを飲む理由

飲食店オーナーを目指すサラリーマンが、日々収集したフードビジネスやサービス業についての情報を書き込む備忘録

大阪のオシャンティな堂島ホテル、2回転半のきりもみ飛行の末に墜落

ホテル

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画像:堂島ホテル

要点:大阪市北区の名物ホテル「堂島ホテル」が2016年12月末で営業を終了します。1984年にビジネスホテルとしてオープンして以来、オーナーや運営会社がコロコロコロコロよく変わることでよく知られたこのホテル。建物は2015年11月にゴールドマン・サックスとウェルス・マネジメントが、これまた27億円という結構な金額で取得していました。運営会社は、婚礼プロデュース企業「ウェイブ」が手がけています。畑違いの会社がいわくつきのホテルを再建できるのか、と注目が集まっていましたが、2年半の運営期間を経てとうとう手を引くことが決まったようです。ビジネスホテル、デザイナーズホテル、どちらにもなりきれなかった哀れなホテルの話です。

 

■月1500万円超の賃料はこの規模では払いきれませんよ

 ウェルス・マネジメントは、堂島ホテルの運営会社との建物賃貸借契約を2016年12月31日に終了する旨を発表しました(資料はこちら)。2017年3月期の連結業績に与える影響は4600万円としています。3ヶ月間の賃料に穴が空いたわけですから、単純計算で1ヶ月だいたい1500万円で貸していたのですね。

 堂島ホテルの客室数は76。客室料金が平均で1万2000円、稼働率が70%で計算すると……。

※固定賃料だったと仮定しています。

▼月間売上

 76室✕12,000円✕30日✕70%=19,152,000円

▼人件費が売上の20%(ちなみに、シティホテルで40%、ビジネスホテルで15%が平均です)

 19,152,000円✕20%=3,830,400円

水道光熱費が売上の4%(全国平均)

 19,152,000円✕4%=766,080円

▼賃料 15,000,000円

▼粗利

 19,152,000円ー(15,000,000円+4,452,000円+3,830,400円+766,080円)

 =4,896,480円の赤字

 客室単価・稼働率はもうちょっと良かったかもしれませんが、それにしてもムチャクチャですね。仮に客室単価が2万円でフル稼働したとしても、賃料が売上の30%以上を占めています。飲食・ホテルなどの客商売の場合、家賃は10~15%に抑えるのが普通。これで継続は不可能です。たとえ、レストランの売上が200万円あったとしても厳しい数字。販管費を入れたら、どうにもなりません。

 しかもこのホテル、築32年というそれほど古い建物ではないにも関わらず、水漏れやボイラー不調などが続いていました。修繕費も考えれば、誰が運営してもムリだったのかもしれません。

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画像:ウェイブ

■チャンスはピンチのふりをする

 2014年夏、ホテル運営を任されたのは、ホテルのウエディング部門をプロデュースしていた「ウェイブ」でした。当時ホテル運営に手を挙げる人がおらず、あれよあれよという間に決まった形。代表は関西のブライダル業界の名物社長山元貫司氏ですが、ホテルの知識はまるでない状態からのスタートでした(少しでも知識があれば、この条件でやろうとは思わなかったでしょう)。

 チャンスはピンチのふりをする、それがウェイブのスローガン。知識と経験はゼロ、やってみない?といういきなりの誘い、堂島の顔ともいえる名物ホテルの運営。

 「♪ いきなりやってきた絶好の機会、逃すわけにはいかない世界、沸かせてみせるぜ格好の舞台 ♪」ってな感じでやってしまったのだと思います。「だって、楽しそうじゃん?」

 山元貫司氏はそういう状況を楽しめるタイプの人でした。↓この方です。

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画像:blendboard

■何だか、映画みたいでしょ?

 運営に乗り出すやいなや、いきなりの水漏れクレームで、真夜中に雨の中カッパを着て点検。休日にボイラーの調子が悪くなって駆けつけるといったことが日常茶飯事だったそう。さぞかし苦労したかと思えば、本人はケロッとした様子。自分が映画の主人公になったような気分だったようですね。このあたりの経験談を雑誌に連載していた時期があります。

 お高くとまったフレンチレストランを、カジュアルダイニングにリニューアルしたのもこの人。「だって、時代に合わないんだもん」という理由でです。料理長やスタッフと大喧嘩したなどという話も。

 法人宴会をとろうと、社長自らあちこち外回りもしました。堂島界隈はサントリーのお膝元とあって、名のしれた企業が軒を連ねています。宴会メニューに揚げたての串揚げを入れてみるなど、顧客のニーズに応えることもしばしば。面白いこと、やりたいことをやりたいようにやっていたようですね。

 そんなこんなで建て直しできるか、という噂もありましたがダメでした。やはりアイデアだけでホテル運営は難しいですね。欧米型の極めて理知的、論理的、生産的なビジネスですよ、ホテルは。

 ウェイブが手を引いて、運営の後釜をどうするか、というのが気になります。産経はこんな記事を出していますね。フランスのホテルチェーン、アコーが請け負うのでは、という憶測です。

 いずれにしても、今の中途半端なホテル形態だと長続きさせるのはムリでしょう。ブランディングもできていないのに、デザイナーズホテルを気取り、泊まってみると安っぽさが目につく。サービス・設備もそこそこ。ビジネスホテルみたいに安くもない。そういうホテルは徹底的なテコ入れが必要です。

 巨大ホテルチェーンがブランド力を駆使し、会員を囲って人を集めた方が良さそうですね。

ホテル事業の仕組と運営 (現代ホテル経営講座)

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