日本ビューホテルに見る、再建手法の変遷
■ハゲタカの時代が終焉
要点:浅草ビューホテルなどの運営を行う日本ビューホテルを例にとりながら、ファンドもまともな長期投資をするようになったよ、という話です。
まずは皆さんのファンドのイメージ。そうですよね、聞かなくてもわかります。その通りです。かつて米ブラックストーンがその手法で数十億、数百億を稼ぎ出しました。”円”ではありません、”ドル”です。すなわち、数兆円を稼いでいたというわけです。
倒産寸前の会社を(銀行のレバレッジを利かせてリスクオフで)買い付け、大規模リストラで急速に業績回復し、上場させて莫大な上場益を得る。それが(ハゲタカ)ファンドのイメージだと思います。リスクを追わずに門外漢の分野の会社を買い付けて、大量の失業者を排出して売却益を手にするという、人でなしの言葉にぴったりな組織。ファンドとはそういうものでした。
■みずほ系ファンドが民事再生手続きで資金を注入
イケイケだった時代にゴルフ場への過度な投資が災いし、ビューホテルグループは2001年に民事再生手続きを行います。負債総額は800億円。救いの手を差し伸べたのはみずほ系のファンドでした。
再建のロードマップは設備投資を控えるという地味なものでした。施設の閉鎖や大規模リストラは行わなかったのです。那須りんどう湖レイクビューなどの、明らかに「不採算事業なんだろうなぁ」といったところも、事業を継続しています。
ホテルビジネスのカギとなる、設備投資(リニューアル)ができなかったのは痛手だったようですが、資金がショートしているのだから、それくらいは当たり前です。
2012年、無事に債務返済を終え、上場準備に入ります。そして2014年7月、折しもアベノミクスによる急激な円安の影響で、外国人観光客が浅草に溢れ始めたタイミングでの東証二部上場となりました。
■今期経常を4%増益に上方修正
インバウンド需要を見越した投資家の資金が入り、株価は初値こそ2199円と公募割れとなったものの、約一年後には2950円の高値をつけるまでになりました。
その後、上場益で得た資金で、両国のシティホテルを買収しています。150室のホテルで、両国国技館から歩いて3分くらいの立地です。外国人観光客増加に向けた戦略といえるでしょう。
上場後は新宿や池袋、渋谷などのビジネスホテルに参入するものと予想していましたが、ビューホテルの戦略はどこまでも手堅いものでした。ファンドの息がかからなくなってもなお、淡々と前進しているようです。
先月には16年4月期の経常利益を従来予想の8.3億円から11億円に31.1%上方修正を発表。一転して4%増益となりました。両国ビューホテルの売上が寄与し、業務費や管理費の低減を図ることができたのだとか。やはり手堅い、ビューホテル。
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【関連News】
ビューホテルがヒューリック と資本・業務提携すると発表した。
業務面では同社のホテル運営ノウハウを生かして、ヒューリックによる首都圏を中心とした新規不動産開発などを共同で展開する。
資本面ではエムシーピースリー投資事業有限責任組合が、保有する同社株の一部(発行済株式総数の25%)をヒューリックに譲渡。これにより、ヒューリックは同社の第2位株主となる。
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